島原・天草一揆後は、絵踏みなどによってキリシタンは厳しく監視されてきましたが、文化2(1805)年に天草下島の高浜村や今富村などで、約5,000人余りの潜伏キリシタンがいることが発覚しました。信者たちは祈りの対象として守り続けた鏡やメダイなど、すべて没収されましたが、それでもなお、密かに隠し持っていた信仰具が天草町大江において発見され、今では禁教時代の研究資料として、貴重な民俗文化財となっています。
一括で県指定となった遺物のうち、注目されるものは「経消しの壺」、「かくれことば」、「ヴェロニカのメダイ」などです。「経消しの壺」は、仏式で行う葬式のお経を壺の中に封じ込み消すものであり、「かくれことば」は、『オラショ』と言われるお祈りの言葉を書いたものです。また「ヴェロニカのメダイ」は、一見大雑把な作りに見えますが、16世紀後半に広く信者間に流通したメダイと考えられ、福岡市の博多遺跡では、このメダイと同じタイプの型が出土しています。その他、根付・観音像・神像・バッチ・石製十字架・聖骨入れなどがあります。
■指定区分:県指定
■指定種別:有形民俗文化財
■指定日:昭和41年1月31日
■地域:天草
■所在地:天草町大江1749 天草市立天草ロザリオ館