県指定史跡「大矢遺跡」から出土した遺物です。大矢遺跡では、縄文時代前期から後期の遺物を中心に、古代から中世の遺物も見られます。各時期の遺物包含層が何重にも重なり合い、文化の変遷と縄文海進・海退現象が確認されるめったにない例です。
出土遺物として、縄文時代中期末の獣形土製品、後期初頭の土偶や岩偶、中期のマムシの装飾のある土器スタンプ形土製品などがありますが、このような種類の遺物は、主に東日本の縄文遺跡から出土することが多く、特殊な遺物と言えます。また、漁労具として後期初頭の結合式釣針の石製軸部が出土しており、これは朝鮮半島のオサンリ遺跡や釜山周辺の遺跡からも発見されているため、「オサンリ型結合式釣針」と呼ばれています。
その他にも、組み合わせ式石もりも出土しており、朝鮮半島との交流を示す遺物としても注目されています。
大矢遺跡の出土遺物は、在地の文化に、大陸的文化と東日本的文化が複雑に絡み合う状況を示しており、縄文文化研究のうえで九州を代表する遺跡です。