この像は、球磨郡多良木町福田寺観音堂から出たものです。光背の一部が欠けていますが、瓔珞(ようらく)や台座もすべてそのままで残っており、秘伝として長く保管されたことを物語っています。
鎌倉後期の作で、像の高さは48.5cm、台座高は27.5cmであり、桧の寄木造りで玉眼がはめられています。小品であるが、重厚で強い気迫とさえた力法は見事で、作者の手腕がうかがえます。腰をわずかに左にひねり、右膝をすこし浮かした楽な姿もかえって余裕をとどめています。さらに、台座の心棒の留板には「文永10年(1273)11月5日開眼供養了仏、工作者康円(花押)」とあります。
字体は古いですが、花押が康円の作と異なるので、のちに弟子が追記したものと推測されます。
■指定区分:県指定
■指定種別:彫刻
■指定日:昭和36年11月21日
■地域:本渡
■所在地:諏訪町